【ミラノ 観光地】サン・サティロ教会は「だまし絵の教会」

ミラノの大聖堂・ドゥオーモを訪ねる機会があれば、少し足を伸ばしてこの教会を覗いてみてほしい。

時間はそれほどかからない。

さらに見学は無料だ。

ドゥオーモの目と鼻の先にあるこの教会、行かないと損をした気分になるはずだ。

サン・サティロ教会のだまし絵


大聖堂・ドゥオーモから歩いて4分ほどのところにサン・サティロ教会はある。

こじんまりとした教会で気をつけていないと見逃してしまいそうな教会。


鉄の門が開いていれば内部には自由に入ることができる(無料)。

入り口のドアを入って豪華なフレスコ画が描かれた丸天井の先にある祭壇を正面から見る限り普通の教会だ。 

ただ、左側の通路から祭壇に近づいたなら、ほとんどの人が「えっ!」と声をあげて驚くはずだ。

中にはこのカラクリに気づかずに「何が?」という反応を示す御仁が居るかもしれないが、それでもしばらくここを眺めていればきっと気づくはずだ。

完璧な遠近法に騙される

それでも気づかなかったら、野暮だが説明してやってほしい。きっと驚くはずだ。

この教会、正面から見ると祭壇の奥は数メートルの奥行きに見えるが、実際はたったの97cm、完璧な遠近法を使っただまし絵になっている。

このだまし絵の仕掛けを知った後に改めて正面から見ても、祭壇の後ろの柱廊は数メートルの規模で存在しているようにしか見えない。

上:正面から見た天井画が素晴らしい。 
下:左側の通路から祭壇を覗くと後ろは、わずか97cm。

なぜだまし絵が必要だったの

ではなぜだまし絵を作る必要があったのか。

実はこの教会はかつての著名な建築家ブラマンテによってつくられた教会のリメイクなのだ(オリジナルは完成せず、やがて崩壊してしまった)。

当初、ブラマンテは十字架と10メートルの奥行きを持つアプシス(半円形の張り出し)のついた
三廊式の設計で取り組んだが半分完成したところでミラノ市から教会の裏通りにアプシスが食い込んではならないと警告を受けた。

そこでアプシスは設計を変更することにしたがアプシスを諦めたわけではなかった。

アプシスのないT字形の教会など考えられないからだ。

その結果、完成したのが空からみると外観はT字形だが内部からはきちんと十字形に見える教会だ。

それを実現するために使われたテクニックが、完璧な遠近法によるだまし絵だ。
(参照:幻冬社ルネッサンス 「人生で少なくとも一度はミラノでしておきたい101の事柄」)

大聖堂(ドゥオーモ)に来たら是非立ち寄ってみることを強く勧める。

狐につままれたような気分になること請け合いである。

 

訪問年月:2019年12月 2020年2月